「不貞行為」とは
離婚原因でもっとも多いものは「性格の不一致」とされていますが、「不貞行為」を原因とする離婚も増加傾向にあります。特に妻から離婚請求をする場合の離婚原因が「夫の不貞行為」であるケースは、近年大変多くなってきています。
不貞行為とは、結婚している人が配偶者以外の異性と性的な関係を持つことが典型です。
「性的関係」の意味については、性交渉に限定せずに「手をつなぐ」「キスをする」「身体に触れる」などの行為も含めるべきとする考えもありますが、実際に裁判となった場合に重視されるのは「性交渉があったかどうか」です。
1回でも肉体関係を持てば離婚?
「性交渉があったかどうか」という1点が重要視されるので、1回限りの不倫であったのか、特定の異性と性交渉を続けたのか、愛情の可否などは全て関係ありません。配偶者以外の人と性的な関係をもったという事実があれば、風俗店に1度通っただけでも、法的には離婚原因と認められる可能性がありえるでしょう。
しかし実際は、裁判で不貞行為を離婚の理由として認めてもらうためには、ある程度継続的に不貞行為を行っている事実がなければ難しく、過去の裁判例では1回のみの不貞行為を理由に、離婚を認めたケースはほとんど存在しないというのも事実です。
証拠の重要性
配偶者の不倫が原因で離婚することが夫婦間で決まっていても、慰謝料の額や条件について話し合いを進めていると、パートナーが急に不貞行為を否定してくることは珍しいことではありません。
しかしこの場合に不貞行為を裏づける証拠があれば、離婚の話し合いの主導権を握り、有利に離婚話を進めることができます。また調停や裁判で慰謝料を請求することになったとしても、有力な証拠があるか否かは、離婚を成立させることができるかに関わってきますし、慰謝料の額に大きく影響します。
証拠の例
不倫をしている(していた)ことがわかる(もしくは推測できる)証拠の例としては、以下のようなものがあります。
・浮気現場の写真や映像 ・不貞していることがわかる、スマホやパソコンに保存されている画像 ・調査会社などの第三者の証言 ・相手が浮気を認めた発言を録音・録画したもの ・性的関係があったことを認める手紙や日記 ・SNSの書き込み、閲覧履歴 ・ホテルに入ったことがわかるGPSの記録 ・浮気相手とのメール、LINE、通話履歴 ・交通機関ICカードの使用履歴 ・クレジットカードの利用明細書や領収書 ・携帯電話の利用料金が増えたことを示す明細書 ・ガソリンスタンドの利用料金が増えたことを示す明細書 ・ラブホテルの割引チケット ・車の中に落ちているアクセサリー |
上記の例からも、パートナーの携帯電話や封書などを見てしまいたくなるものです。しかし携帯電話や封書を勝手に見ることは、プライバシーの侵害になり民事上の責任を問われる可能性があります。また、封書を勝手に開封することは刑事罰の対象になる可能性もあります。
証拠が重要であるとはいえ、証拠の集め方については、弁護士に相談したほうが後のトラブルを防げるでしょう。
不貞行為が認められなくても離婚できる?
性交渉は密室で行われることがほとんどなので、その事実を証明することはなかなか難しいでしょう。ただし、たとえ性交渉の事実を証明できなかったり、性的な関係があったといえなかったりした場合でも、法定離婚事由(原因)の一つである「婚姻を継続し難い重大な事由」として「不貞類似の行為」があったという主張は可能です。裁判所で認められれば、離婚できます。
いずれの場合も、弁護士の専門的なアドバイスを受けることをおすすめします。
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