弁護士 齋藤健博

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婚姻費用

婚姻費用とは

婚姻費用とは、結婚した夫婦が共同生活を維持するために必要な費用のことで、具体的には生活するうえで必要となる衣食住などの「生活費」のことです。家庭内別居など、実質的に同居している場合でも、夫が生活費を渡さない場合は婚姻費用を請求することが可能です。

民法上、夫婦は婚姻費用を分担しなければならないと定められています。夫婦が別居したとしても法的な結婚状態が続いている限り、それぞれの生活費や子どもにかかる費用は、婚姻費用として分担しなければなりません。
したがって、夫婦のうち収入が少ない人が多い人に費用を請求できることになります。

婚姻費用に含まれる費用

婚姻費用には、食費・光熱費・家賃などの生活費はもちろんのこと、子どもの養育にかかる費用も含まれます。

そのため、婚姻費用の支払いを受ける側が子どもの面倒を見ている場合、婚姻費用が増額します。他にも、子どもの人数が増えたり、15歳以上の子どもがいたりすると「より養育費用がかかる」との判断から、婚姻費用が増額することになります。

認められない場合もある?

婚姻費用は支払いを受ける夫婦の一方自身の生活費と、子どもの養育費と二つに分類されます。
子どもを養育している限り、養育費の負担は「子どもへの義務」と考えられているので、別居に至る事情とは関係なく認められます。

しかし、パートナーの生活費については、別居に至る事情が問題となって認められないケースもあります。具体的には「婚姻関係が破たん・別居に至る原因」が、婚姻費用を請求する側にあるような場合です。その場合、一部または全部の婚姻費用請求が認められないこともあるので注意が必要です。

金額の目安

婚姻費用の金額は、双方の収入状況や子どもの有無、人数、年齢などによって異なります。
例えば、支払う側が高収入の場合は金額が上がり、支払いを受ける側が高収入の場合は金額が下がります。

婚姻費用の金額は、基本的に当事者同士が話し合いで決めることになりますが、「婚姻費用の算定表」を参考にして決定する場合もあります。
「婚姻費用の算定表」は家庭裁判所が採用している基準であり、家庭裁判所で婚姻費用の取り決めをするときにも使用されるものです。自分のケースと照らし合わせて、妥当とされる金額などを一度確認しておくとよいでしょう。

※参考:養育費・婚姻費用算定表

請求方法

話し合いができる状態であれば、両者の合意のみで金額を取り決めることができますが、婚姻費用について話し合いで決めることができない場合は、「婚姻費用分担請求の調停」を申し立てましょう。調停は、話し合いがまとまらない場合だけではなく、相手が話し合いに応じない場合にも申し立てることができます。また、必ずしも離婚前提である必要もありません。

なお、調停での話し合いがまとまらずに不成立に終わった場合は、自動的に審判に移行します。最終的に、裁判所が婚姻費用の金額を決定することになります。

取り決める最善のタイミングは別居前

婚姻費用に関しては「請求した時点からの費用を請求できる」という考え方が一般的です。そのため、婚姻費用を請求するタイミングよりも前に「支払われるはずだった婚姻費用」をさかのぼって請求することは難しいと考えられます。

別居前に取り決めておくことができれば、「別居後に生活費がもらえない期間」を発生させずに、安心して生活することができます。だからこそ、別居前に取り決めておけることが理想ではあります。

ただし、離婚後であっても、過去に支払われなかった婚姻費用も含めて、財産分与として精算できることがあります。婚姻費用について話し合いがまとまらず、婚姻費用の請求ができずに離婚となってしまった場合も、まずは弁護士にご相談ください。

「生活費に対する不安で、別居も離婚もできない」と悩まれている方も多くいらっしゃいます。今後の生活にかかわることですので、専業主婦の方は特に、今後の生活のためにも婚姻費用を確保して離婚に備えましょう。